今回の【出張レポート2024春#4】は、ブルゴーニュの名門、ドメーヌ・ミシェル・グロをレポートです。
畑や醸造への丁寧なこだわり、日本市場への思いや最新ヴィンテージの話まで、現地でしか聞けないお話しをたっぷり伺ってきました。ミシェル・グロならではの魅力を、ぎゅっと詰め込んでお届けします。
ドメーヌ・ミシェル・グロとは
1978年に設立され、ヴォーヌ=ロマネを拠点とするドメーヌ・ミッシェル・グロ。
ブルゴーニュ名門一族グロ家に属し、モノポール*「クロ・デ・レア」**を象徴にクラシックで端正なスタイルのピノ・ノワールを造り続ける名門。
現当主ミッシェル・グロ(父ジャン・グロの長男)は1995年の家族分割でこの区画を継承し、一族の中でも「ヴォーヌ・ロマネの伝統を体現する造り手」と呼ばれています。
*モノポールとは、一般的にブルゴーニュの畑は均等相続の背景から複数の生産者で分割されてきたが、“モノポール”は一つのドメーヌが独占所有する特別な区画。
**「クロ・デ・レア(Clos des Réas)」はブルゴーニュ、ヴォーヌ・ロマネの1級畑で、1860年以来グロ家が単独所有してきた唯一無二のモノポール。ドメーヌ・ミッシェル・グロの象徴的キュヴェ。
グロ家の歴史
グロファミリー 家系図※

※出典:Domaine Anne Gros公式サイトを基に再構成(作成:池田眞琳〈編集ライター〉)
ブルゴーニュの名門グロ家は、古くはルイ・グロを祖とし、長男ギュスターヴ、長女コレット、次男ジャン、三男フランソワへと受け継がれてきました。
次男ジャン・グロの代にはさらに3人の子どもたちへと分かれ、長男ミシェルが「クロ・デ・レア」を含む区画を継ぎ「ドメーヌ・ミシェル・グロ」となりました。※
※長女アンヌ=フランソワーズが自身のドメーヌを、次男ベルナールは叔父ギュスターヴと叔母コレットから「グロ・フレール・エ・スール」を引き継ぎ、それぞれ独立した道を歩むことになりました。
ピエール・グロによるワイン造りがスタート
近年は長男ピエール(1990年生まれ)への世代交代が進んでいます。
ピエールは元々ワインの道ではなく、パリとリールで学びエンジニアとして働いていましたが、家業を継ぐ決意を固め、醸造技術者の上級免状を取得してワイン造りに転身しました。ミシェルの監督のもと、共にワイン造りを行っています。
ミシェル・グロの所有畑
ミシェル・グロの代表的な畑
- Vosne-Romanée 1er Cru Clos des Réas
- Vosne-Romanée 1er Cru Aux Brûlées
- Chambolle-Musigny 1er Cru Les Charmes
- Morey-Saint-Denis 1er Cru Les Chaffots
- Nuits-Saint-Georges 1er Cru Les Vignerondes
- Richebourg Grand cru
- Bourgogne Hautes-Côtes de Nuits
所有畑についてドメーヌ・ミシェル・グロの大きなニュースは、2022年よりリシュブールの生産が始まったことです。
グロ・フレール・エ・スールに貸し出していた畑が戻ってきたためです。
1995年以来、25年契約でリシュブールを貸し出していたのだとのことで、元々の持ち物である半量は、グロ・フレール・エ・スールに残るのだということです。
畑面積の広さと人員体制
現状は、オート・コートに15ha、コート・ド・ニュイに8haの、あわせて23haを所有しています。ブルゴーニュでは平均の所有畑が6.5haなのでなんとその約4倍の畑を持っています。やはり名家なのだということを再認識させてくれる所有畑の広さです。
15haのオート・コートの内の7haについては、モノポールのフォンテーヌ・サンマルタンに当たり、白が3ha、赤が4ha植えられています。元々はアリゴテが植えられていたところ、シャルドネとピノに植え替えたとのことでした。
フルタイムの従業員は事務員1人を含む9人で、大きな畑をもっているのにふさわしい大所帯です。これに加えてピエール本人、さらには当主の座こそ譲ったとはいえ現在の父ミシェルもワイン造りに引き続き携わっています。
醸造スタイルと代替わりの表れ
ピエール・グロが舵を切るようになり、ワイン造りのスタイルにもこだわりや特徴が現れてきています。
赤ワイン造りにおいては全除梗*で醸造を行っており、果梗由来の雑味・青臭さを避け、ピノ・ノワール由来のピュアな果実味を実現しています。
また、ワインに使用する酵母は培養酵母の使用は取りやめ、ブドウにもともとついている土着酵母にまかせるように切り替えました。
*除梗とは果粒を茎から取り外して発酵させる方法。
ヴォーヌ=ロマネを深掘り!
ヴォーヌ=ロマネの村名格*ワインは、オー・レア、コロンビエールという畑のブドウを中心に、オ・ドゥスュ・ド・ラ・リヴィエールの畑も加えて造られています。中でもオー・レアの畑は石灰が多いのが特徴です。さらにマルヌと呼ばれる泥土が加わります。
ワインは柔らかなテクスチャー、比較的しっかりとした収斂性の強いタンニンが残るのは、こうした石灰の多さに由来します。
一級畑の取り扱いと収穫時期の違い
このニュイ=サン・ジョルジュの一級ワインは、特定の畑名をラベルに表記せず、ミュルジェとヴィーニュ・ロンドという二つの畑のブドウをブレンドして造られています。
これは、生産量が年間わずか4〜5樽と少ないため、別々に醸造せず、ブレンドしているためです。
ワインの味わいはやや冷涼な年であった2021年としてはしっかりと凝縮感があります。
収穫時期の差
コート・ドール地方のブドウ収穫が終わってから、オート・コート地方の収穫が始まるまでには、7〜10日ほどの期間が空きます。これは、標高の違いによる気温差が、収穫の時期に大きな差をもたらすためです。
その他のキュヴェと樽の工夫
樽の焼き加減による香り
モレ=サン・ドニのアン・ラ・リュ・ヴェルジィについて。樽の焼き加減の高い樽を使用していることが特徴。
ミッシェル・グロのアン・ラ・リュ・ヴェルジィのワインについては、
樽の焼き加減を高めにすることで、樽香を与えつつ、穏やかでなめらかなタンニンを持つワインに仕上げています。
やや長めの樽熟成期間
樽熟成は18か月ほどと長め。 これによって長期熟成に向いたポテンシャルのあるワインになります。
※長い樽熟成は、酸素との緩やかな接触でワインを安定化させ、木由来の成分で骨格を強め、複雑性を高めることで、瓶熟成に耐えうる下地を作るため、長期熟成に向いたワインになります。長期樽熟成によって、タンニンの重合(ポリメリゼーション)が起こります。微量の酸素に長期間触れることで、果皮や種由来のタンニン同士が結合し、より大きな分子に変化します。この「重合タンニン」は酸化に対して安定的で、酸素が入ってきてもワイン全体を守る役割を果たします。他、フェノール類(アントシアニン色素やポリフェノール)が酸素と反応して安定化し、酸素の影響を受けにくい状態になります。これにより酸化による色あせや風味劣化が起こりにくくなる。
今回で【出張レポート2024春】のご紹介は最後となります。皆様WineBankスタッフによる出張レポートは楽しんでいただけたでしょうか?
今後も皆様に生産者の深掘り情報やワイン市場の動向など有益な情報をお届けさせていただきますので、どうぞお楽しみに!
*印は編集部による補足(編注)
(出張レポート:川﨑大志 編集:池田眞琳)

