今回の【出張レポ-ト2024春♯3】では、ドメーヌ・アラン・ビュルゲで2023年の新樽試飲させていただいたレポートをお届けいたします。この記事を通して、ドメーヌ・アラン・ビュルゲの情熱と各試飲ワインの詳細についてお伝えします。
ドメーヌ・アラン・ビュルゲとは
ドメーヌ・アラン・ビュルゲは、ジュヴレ・シャンベルタンで高い評価を得るワイナリーです。1974年に先代のアラン・ビュルゲ氏が設立し、息子であるエリック氏とジャン・リュック氏が跡を継ぎました。有機栽培を実践し、自然との共存をコンセプトに最低限の人的介入でテロワールを表現するワイン造りを行っています。
訪問と樽試飲の概要

訪問したのは2024年4月30日朝。この時点ではワインの醸造プロセスの中でマロラクティック発酵*まで完了しており、その後ワインは樽へ移動され、澱引き**の段階まで進んでいました。清澄・ろ過の程度は生産者ごとにこだわりやスタイルがありますが、ジャン=リュック氏によると澱引き時に軽くろ過***をかけており、その後の瓶詰時にはろ過をしないそうです。
*「マロラクティック発酵(MLF)」とは、醸造においてリンゴ酸が乳酸に変わる反応のこと。酸味をまろやかにすること、MLFによるバターのような風味を表現すること、微生物的安定を目的として選ばれる醸造オプション。
**「澱引き」とは、タンクや樽の底に沈んだ澱(酵母や果皮などの固形物)を残し、上澄みだけを別の容器に移す方法。
***「ろ過」とは、ワインをフィルターに通すことで、目に見える粒子だけでなく、酵母や細菌などの微生物まで除去する方法。フィルターの種類によっては酵母や細菌などの微生物まで除去でき、澱引きよりもさらに細かく清澄化できるのが特徴。
経営体制の変化
先代アラン・ビュルゲ氏がドメーヌを創設した後、息子であるジャン=リュック・ビュルゲ氏とエリック・ビュルゲ氏の兄弟に引き継がれました。その後、兄のジャン=リュック・ビュルゲ氏が弟の持ち分について買取し 、ひとりで切り盛りすることになりました。地下に広がるカーヴは18世紀に建立されたもので、歴史を感じるセラーでありながら、比較的しっかりとした広さのあるカーヴでした。
~試飲開始~ ブルゴーニュ「レ・パンス・ヴァン」

さて、試飲のスタートは広域アペラシオンのブルゴーニュ「レ・パンス・ヴァン」からでした。広域アペラシオンとしてはキレイな果実味と、柔らかながらもしっかりとしたタンニンが印象的なキュヴェです。新樽*は使用せず、フレッシュで溌剌とした果実味が印象的です。
*「新樽」 とは、まだ一度もワインを熟成させていない樽(使用1年目の樽) を指します。新樽は樽由来のバニラなどの香りをワインに与える影響があります。
パンス・ヴァン畑の謎
実はこのパンス・ヴァンという畑、南側は同名で村名格の「パンス・ヴァン」、同じく村名格の「レ・シャン・ペリエ」、「ル・キャレ・ルージョー」、東側をこれまた村名格の「ビヤール」と、三方を村名格に囲われ、ここと唯一北側の「シャル―」の畑だけが不可解なことに広域アペラシオンの指定となっています。
ジャン=リュックに尋ねると、村名格の「パンス・ヴァン」はジュヴレ=シャンベルタン村の行政区域に当たる一方、この北側の広域アペラシオンに当たる「パンス・ヴァン」については、隣村で村意気の南半分がACジュヴレでの生産を認められているブロション村の行政区域に当たるため、行政機関との事情が背景にあるのではないかと仮説を話してくれました。
村名のジュヴレ:サンフォニーとメ・ファヴォリット

ジュヴレの村名格は、区画名は付けず、複数区画のブレンドものを2種類、造っています。
-
サンフォニー:砂利質の畑主体でミネラル感が特徴、新樽比率28%
-
メ・ファヴォリット:粘土質主体で柔らかく華やか、平均樹齢75年
新キュヴェ「コンブ・ラヴォー」
次にご紹介いただいたワインは村名格の「コンブ・ラヴォー」。
かつては「メ・ファヴォリット」にブレンドされていたものを独立させたキュヴェです。年間6樽ほどの生産で、冷涼さと柔らかさを兼ね備えた個性を持ちます。
一級畑「シャンポー」「ラヴォー=サン・ジャック」
シャンポー
ジュヴレー最北で、標高も高くミネラル感と繊細さが際立つ一級畑。馬での耕作も開始 ※(2015年~)
※馬耕作をすることで土壌の健全性を保ちながら丁寧な作業ができます。トラクターよりも土を過度に締め固めないため、根が呼吸しやすく健全に育ちます。土壌構造(微生物の活動や水はけ)を保ちながら雑草管理ができます。
ラヴォー=サン・ジャック
クロ・サン・ジャックに隣接。冷たい風が酸をもたらす、ジュヴレの中でも特異な畑。
エシェゾー
正確な区画は開示されていませんが、買いブドウにてワインを造っています。ジャン=リュック氏は見事な果実味と凝縮感のワインという誇りを持って説明してくださいました。
醸造哲学とチーム体制
ジャン=リュック氏は亜硫酸の添加量を極力控え、SO2アレルギーの方でも感じないレベルにとどめているとのこと。
スタッフは事務方を含め5人、10haの畑を手厚く管理。繁忙期には臨時雇用も活用し、質の高い畑仕事を実現。
まとめ
毎年高い品質のワインを世に出し続けているアラン・ビュルゲのこだわりを知ることができた貴重な訪問でした。
ドメーヌ・アラン・ビュルゲの情熱と丁寧な仕事ぶりを感じられた充実した訪問でした。
>>>次回は【出張レポ】2024春#4 ドメーヌ・ミシェル・グロ編をお届けいたします。お楽しみに!
*印は編集部による補足(編注)
(出張レポート:川﨑大志 編集:池田眞琳)

