〜50年以上の歴史を継承 WineBank創設の背景と今後に迫る〜 中野社長と中村顧問の独占インタビュー<WineBank創業ヒストリー >
株式会社WineBankは、「既存のワイン流通をアップデートする」をミッションに掲げ、ワインの輸出入販売、レストラン事業、ワインアドバイザー事業に加えてワインテック事業に進出している事業会社です。新興企業と思われがちですが、創業の歴史は50年以上前に遡ります。事業承継が社会課題として捉えられる昨今、歴史ある事業を引き継ぎ、新規事業立ち上げに至った背景をインタビュー形式でなぞりました。
ワイン輸出入事業のはじまり
3つの業態からワイン事業を展開
Q. 中村顧問がどのように事業展開していったのかその歴史を教えてください
中村さん:
改めて考えてみると、わたしが札幌で事業を始めてからもう50年、半世紀も経ってしまったんですね。
時が経つのは早いものです。あたりまえなのですが、当時は今のようにインターネットなどはなかったので、アナログな世界でした。
料理人としてキャリアをスタートしたのですが、
なかなかうまくいかず断念したころに家内がワインの勉強を始めることがあって、なんとなく一緒に始めることになったんです。
そこからワインの取り扱いに携わることとなり、当時まだ珍しかった楽天ショップからオンライン販売を始めて、
ECと実店舗での物販と両方で事業をスタートしました。
その後、フランス料理のお店を始めたのが20年くらい前でしょうか。
フランス料理のお店2店舗、ワインショップ、それとECのワインショップと3つの事業を展開することになりました。
情報が少ない環境下での事業開拓
Q. 3つの事業を展開していく上でどのような苦労がありましたか?
中村さん:
当時はビール会社から卸先を経由して、ワインの仕入れをする状況でした。
直輸入を開始したインポーターで全国展開していた会社は、エノテカや稲葉くらいでした。
フランス料理に関する情報も大変少なく、誰も本場フランスで料理を食べたことがなかったので、
ソムリエ協会の教本を見てこの料理はなんだろう?って思うことが多かったですね。
フランス料理のリー・ド・ヴォー(仔牛の胸腺肉)を初めて食べたのは、
忘れもしない1995年のアピシウスでのことでした。当時は高橋徳男シェフの時代です。
フランス現地で素地をつくる
Q. 情報が少ない状況をどのように乗り越えていったのですか?
中村さん:
1996年に初めて家内と2人でフランスを訪れました。
当時ワイン業界でフランスを訪れる人はまだ少なかったこともあり、先駆けて現地でさまざまな人脈を作ることができました。
料理人がフランスで働く許可証を貰うことができても、ソムリエが本場で働くのはほぼ無理な状況でした。
その中で、日本人で初めて本場フランスでソムリエとして活躍していた石塚秀哉( Hide Isiduka )が札幌出身の仲間だったのです。
最終的には、ボルドーの Cordeillan-Bages コルディアンバージュ(2星)の支配人まで登りつめたのですが、
毎年フランスを訪れるたびに、秀さんから様々な取引先を紹介してもらいました。
それもあって、ありがたいことにどんどんインポーターさんとの取引口座が増えていきました。
事業継承の背景
体力に限界を感じはじめ、コロナ禍で事業継続に不安に
Q. 他社に先駆けてさまざまな取り組みをされておられたのに、事業を継承しようと思った背景はなんですか?
中村さん:
3つの事業を展開していく中で、子供は他の進路を希望していて、正直なところ後継ぎがいない状況でした。
私自身もソムリエとして現場に出てサービスをしつつ、
仕入れもして、ECサイト運営も自分やってとフル回転していたのですが、年齢とともに体力的にも難しくなってきたんです。
体力的に不安を感じつつあった2020年の2月の雪まつりが終わってから、 コロナ禍に巻き込まれてしまいました。
そこから何回か休業せざるを得ず、不安感が高まりました。そこでM&Aを検討するようになったんです。
従業員を安心して引き渡せる先を検討
Q. どのような方に事業継承したいと考えていましたか?
中村さん:
事業継承はもちろんのこと、今まで一緒に働いてきてくれた社員もお任せするということもあったので、
労務管理をきちんとしてくださる方がいいと思っていました。
継承者を中野さんにした決め手とは?
Q. 改めて聞くのも照れくさいですが、自分に決めてくださったポイントは何だったのですか?
中村さん:
様々な候補者がいる中で、中野さんは非常にスマートで、数字に強く、 バランス感覚に優れていました。
コミュニケーション能力に長けているし、人を不愉快にさせるような言動がないのも素晴らしいと感じました。
サービススタッフへの対応もとても良くてね。とにかく感じが良かったんですよ。
また、人の話もよく聞いてくれる方だと感じました。
ワインに関する知識も素晴らしいし、所有されてるワインリストも本数も多いですし、言うことなしでした。
そして、別業種のM&Aを行った時の失敗談をしてくださったのですが、
包み隠さずリアルに話されていて、凄く正直な方だなぁと感心しました。
話は盛らない、失敗も包み隠さないというのは中々出来ることではありません。
事業承継して誕生した株式会社WineBank
中村さんが築いた人脈を元に事業継承した強みを活かして事業拡大中
中村さん:
今でも一緒にお仕事をすることはあるのですが、改めて今後の事業拡大方針について聞かせてほしいです。
中野さん:
基本的には中村さんが築いた人脈や取引実績を元に事業拡大を進めています。
事業承継したことの強みは、元々持っている酒販のライセンスや取引口座など、今申請しても取得することができないものがあることです。あとは我々の方で資金を提供し、フランスから輸入によるインポーター業をスタートさせ、EC通販だけではなく業務用卸や個人富裕層向けに販売先をさらに増やしたり、取引量の拡大推進に集中できます。1番難しいインフラの構築をすでに中村さんにしていただいていたことそのものが大きなアドバンテージです。
株式会社WineBankの今後
Q. 今後どのような構想を描いていますか?
中野さん:
今大体20数億円ぐらいワインの在庫がありますが、
3年から5年にかけてそれを100億円にしたいと考えています。
その100億円のワインの在庫を、クラウド上で管理したいと思ってるんですね。
Q. 100億のワインリストをクラウド上で管理できるとどのようなことができるのですか?
中野さん:
100億分のワインの在庫がクラウド化できると、
有名なワインのほぼ全てのヴィンテージがおそらく揃うのではと考えています。
さらにそれぞれの金額もわかります。
それを世の中に公開することでお世話になった方の誕生年に
このワインを送ってほしいとWineBankに伝えてもらえたら、
それをお贈りするということができたり、記念日をお祝いするタイミングで好きなレストランに送って
食事と一緒に楽しんでいただくお手伝いをしたりできるのではないかと考えています。
全てで 透明性のある価格でご提供することができるとメリットがあるのではと考えています。
Q. 将来に向けてどのようなミッションをお持ちなのですか?
我々の会社のミッションは「ワインの流通をアップデートする」と定めています。
今までの流通だけではなくて、
もっと個人の方に利用してもらうなど様々な機会に応じて適したワインを流通させていきたいと考えています。
さらには、先ほどのクラウド上のワインリストは飲食店さん向けにも開放したいと考えています。
我々の100億円分のオンラインのリストを飲食店さんに公開すると
お客様のご要望に応じてWineBankのオンラインのリストの中から選んでいただき
事前にその飲食店さんにワインをお届けすることでワインを選択する幅を広げたいと思っています。
そうすると、店側の在庫管理が楽になることで店舗運営に貢献できますし、
お客さんにも最適なワインが楽しめる機会を増やすことができると考えています。
クライドワインリスト公開は、飲食店側と消費者側の両方のためになると考えています。
まとめ
創業50年以上の歴史ある酒販会社の事業承継を行い、既存事業の基盤を活かして新規事業へ参入した株式会社WineBank。
今後は創業者から受け継いだ強いインフラを元にワイン事業の川上(インポーター事業)から川下(ワイン販売・ワイン投資)に至る流通をアップデートし、さらなる事業拡大に取り組んでいきます。