【出張レポ】シャンパーニュ編#2
今回はシャンパーニュの「メゾン・ビュルタン」について出張レポートをお届けします。
目次
メゾン・ビュルタン
メゾン・ビュルタンの立地
ヴェルズィを出て、モンターニュ・ド・ランスの森を抜けるとエペルネーがあります。
「メゾン・ビュルタン」は、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ(マルヌ渓谷)の中心地、エペルネーにあるシャンパーニュメゾンです。
エペルネーの中心部から郊外に向かって伸びるシャンパーニュ大通りには、「モエ・エ・シャンドン」や「ペリエ=ジュエ」「ポール・ロジェ」「ドゥ・ヴノージュ」など、名だたるメゾンが立ち並んでいます。
「メゾン・ビュルタン」は、この大通りの裏通りにあります。
メゾン・ビュルタンの歴史
「メゾン・ビュルタン」は、1933年から続くMA(マルク・ダシュトゥール、いわゆるプライベート・ブランド)の大手で、ビュルタンの名前は出さず、100を超える名前でシャンパーニュを生産してきました。
ホテルの名前のシャンパーニュや百貨店の名前で出されたり、スーパーのプライベートブランドとして売られるのがこのマルク・ダシュトゥールと呼ばれるものです。
主にスーパーマーケットのような大規模販売店に向けたカスタマイズシャンパーニュが主力で、フランス国内で評価の高いアルフレッド・ロッチルドというブランドの名が通っています。
現在は、「ランソン」「フィリポナ」「ドゥ・ヴノージュ」などを傘下に収める、ランソンBCCグループの一員となっています。
1900年エーヌ県生まれの創業者のガストン・ビュルタン氏は1923年にシャンパーニュに移り、商才を発揮します。地元の生産者たちからの信頼も厚かったガストン氏は、1967-1973年には、シャンパーニュのネゴシアン組合の長としても活躍しました。1995年の大往生ののち、姪のマリー=ローレンス・モラ女史が引継ぎ、夫のフランソワ=グザヴィエ氏がグループの責任者となります。2006年に、BCC(ボワゼル・シャノワーヌ・シャンパーニュ)グループに引き継がれ、今に至ります。
ワインスタイル
オマージュ・ア・ガストン・ビュルタン
今回試飲したのは「オマージュ・ア・ガストン・ビュルタン」というシリーズ。
これまでの「マルク・ダシュトゥール」ではなく、新たに自社ブランドとして出したシリーズで、創業者のガストン氏へのオマージュとして造られた上級キュヴェとのことです。
コンセプト
コンセプトは、最良のブドウを用いた上級ブランドで、スーパーマーケット等には卸さず、丁寧なブランディングをしていきたいと輸出部長のエヴァ・シューベルト女史は語ります。
現在は、欧州各国、ケベック、香港、オーストラリア等にすでに輸出されているとのことでした。
生産体制
「本当は、生産設備も観ていただきたかったのですが、金曜日の午後は工場がお休みで……」とエヴァ女史は残念そうに語ります。
生産体制とオフィスが完全に分かれているというのは、一軒目のルイ・ド・サシーのような家族経営の生産者と対照的です。
醸造方針
ビュルタンの新しいシャンパーニュはマロラクティック発酵(酸度の強いリンゴ酸を乳酸菌の力で穏やかな乳酸に変化させる発酵)を行い、フレッシュ感や果実味を出すスタイルです。
ブドウ品種はピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネのブレンドですが、その中でもムニエとシャルドネがやや多めなブリュットのワインです。
ワインテイスティング
シャンパーニュ(ノンヴィンテージ)
味わいは、果実味とバランスに優れており、エレガントなスタイルです。
当初は残糖を感じませんでしたが、ほかのキュヴェから戻ると若干の残糖を感じるものの、程よいバランスです。
エクストラブリュットは、はつらつとした酸味にキレイな果実味が特徴的で、繊細なスタイルから、食事との相性がよさそうです。
ロゼ
外観はサーモンピンク色で、味わいはやや力強く、ほのかなサクランボやバラのようなニュアンスが心地よく香ります。
こうした味わいについて、エヴァ女史は、「ふくよかなスタイルはよしとしても、フィリポナのような重たいスタイルにはしたくない」と語ります。
ミレジメ(ヴィンテージワイン)
ミレジメは2014年と2017年を試飲。
どちらも力強さと、酸の強さに、程よい熟成香が印象的でした。
シャンパーニュというブランドに胡坐をかかず、よりよいシャンパーニュを追求するなかでこうして今なお新しいブランドが生まれているというのが、世界で賞賛される品質の高さを担保しているのかもしれません。
≫次回、出張レポート「シャンパーニュ編#3」へ続く
(出張レポート:川崎 大志 / 編集:池田 眞琳)