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【出張レポ】サンテミリオン編  #3

今回ご紹介するシャトー

  • 「シャトー・シュヴァル・ブラン」
  • 「シャトー・フィジャック」

「シャトー・シュヴァル・ブラン」

 

2022年ヴィンテージは霜害の影響で収量が低い年でした。

平年であれば35hl/haほど見込まれる収量が、18hl/haまで減少し、超低収量となりました。

また、年間を通じて降水量が非常に少なく、乾燥が続く年であったため、ブドウの果粒は小さくなりましたが、一方で果汁の凝縮度は高いブドウとなりました。

8月に収穫を開始。
メルローを6日間かけて収穫したのち、10日間空けてフランの収穫を同じく6日間かけて行ったとのことです。

この収穫の早さは例外的な早さだったようです。

新樽比率は100%のため、新樽由来のバニラやコーヒーといった焙煎系の香りが力強く香り、これに負けない凝縮感のある果実味が加わったワインで熟成による変化も楽しみです。

カベルネ・フランのポテンシャル

 

興味深いのは、カベルネ・フランが主体なワインにもかかわらず、青っぽさが全くないという点。

カベルネ・フランは日照が不十分で果梗まできちんと成熟していないと、「ベジタル」「茎っぽい」「青っぽい」と言われる香りが出てしまいがちです。

しかしながら、こちらのワインはそのネガティブな香りがなく、タンニンの質はシルキーで大変素晴らしいポテンシャルでした。

シャトー・フィジャック

 

荒れに荒れた格付け見直しにおいて、唯一最上級であるプルミエ・グラン・クリュ・クラッセ・Aに昇格したシャトーです。

2015年に醸造学校の研修旅行で訪問した思い出のシャトーで、2021年に醸造所をリニューアルして以来訪問していなかったので新しくなった醸造所をみるのは始めてでした。

テイスティングルームへ

ハーフボトルからマグナム、ダブル・マグナム、 メルキオールまですべてのサイズのフィジャックが並ぶテイスティングルームに案内されます。

 

このプリムールの間に約2000人もの多くのプロフェッショナルが試飲に来るとのこと。

2022年ヴィンテージ

ブドウの栽培環境

ブドウの生育の序盤では、芽吹きの直後に霜のリスクが起こった結果、畑中にロウソクを焚き、せっかく出た芽が霜害を受けないように苦心しました。

ワインづくりの工夫

2022年のブドウの生育は平年よりも1ヶ月も早かったのです。

これにあわせて抽出は特にやさしく行い、ルモンタージュも行わず、徹底した温度管理により極力フレッシュ感を残すように心がけたそうです。※

 

※ブドウの生育が例年より早かったというのことは、ブドウの生育期の日照量が多かったため、ブドウが早く成熟した一方で、いくつかのリスクが考えられます。ブドウの種子がゆっくり成長することで香り成分などにつながるフェノール類が形成されますが、この年はブドウが例年より早く育ったことにより、種子が時間をかけて成長する中でつくられるはずの成分が不足する場合があります。このように種子が未熟であったり、あるいは果梗の成熟が不十分な場合、ワインづくりにおいて未熟なタンニンや青臭さが出てしまうリスクがあります。そこで、その対策としてルモンタージュ等の操作をせず、穏やかな抽出を行いました。ブドウが早期に育ち、比較的気温が上がる前の早い時期に収穫したことでフレッシュな酸が維持された一方で、果汁の抽出方法の工夫で青さが出るリスクを回避しました。

テイスティングコメント

今回のサン・テミリオンの試飲の中では、現状で最もバランスがよく、ワインとして完成する前にもかかわらず、すでにタンニンや酸のバランスもよく、キレイで凝縮間のある果実味が心地よいのが印象的でした。

ここから完成までは更なる樽熟成が進んでいきますので、食卓で再び出会える日が楽しみでなりません。

まとめ

出張レポート<サンテミリオン編>を3回に分けてお届けしました。
ボルドーワインの銘醸地、サンテミリオンの魅力を知っていただける機会になれば幸いです。

(出張レポート:川崎 大志 / 編集:池田 眞琳)

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作成者:WINE BANK

執筆:池田 眞琳

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